「ブラック企業の定義」と、私の考えるブラック企業

いま話題のブラック企業ですが、思うところがあったので、一般にどういう定義がされているか簡単に調べてみました。

 

ウィキペディア

労働法やその他の法令に抵触し、またはその可能性があるグレーゾーンな条件での労働を、意図的・恣意的に従業員に強いたり、関係諸法に抵触する可能性がある営業行為や従業員の健康面を無視した極端な長時間労働(サービス残業)を従業員に強いたりする、もしくはパワーハラスメントという暴力的強制を常套手段としながら本来の業務とは無関係な部分で非合理的負担を与える労働を従業員に強いる体質を持つ企業や法人(学校法人社会福祉法人官公庁公営企業医療機関なども含む)のことを指す[1]

 

コトバンク

度を超えた長時間労働やノルマを課し、耐え抜いた者だけを引き上げ、落伍(らくご)者に対しては、業務とは無関係研修パワハラセクハラなどで肉体精神を追い詰め、戦略的に「自主退職」へと追い込む。金融危機影響で就職難が深刻化した2000年代後半から、こうした悪辣(あくらつ)な企業

 

以上をまとめると、ブラック企業の定義として

 

①長時間労働(サービス残業)②パワハラ・セクハラ ③法に触れる営業行為

の3つが挙げられます。

 

「③法に触れる営業行為」や「セクハラ」はともかくとして、「長時間労働」や「パワハラ」という観点から見るとほとんどの企業がブラック企業になってしまう可能性があります。そもそも、就職人気ランキングの上位に来る外資系コンサルティング会社や、証券会社などで裁量労働制のところは長時間労働サービス残業はざらです。また、スタートアップベンチャーはもちろん、大多数の中小企業も残業代など全く支払われないところも少なくありません。また、パワハラについても、「業務に関係した指導であればどんな指導であってもパワハラとは認定しづらい」という現状があります。そして、業務上の正解・不正解は全て上司の一存で決まります。

 

以上から、一般的に言われる「長時間労働(サービス残業)」「パワハラ」という観点から見ると、大多数の企業はブラック企業になってしまいかねません。企業を選別するという観点から、このような定義はあまり役に立たないとすら言えます。よって、私は、違う観点からブラック企業を定義したいと思います。

 

私の考えるブラック企業は、「自社の労働環境の熾烈さを隠蔽する会社・オープンにしない会社」です。

 

例えば、「サービス残業」や「パワハラ」がある会社であっても、企業説明会や選考の過程で「うちの会社は正直、サービス残業はあります。具体的には月**時間です。しかし、社員たちは事業の実現に高く共感したメンバーが集まっているので皆モチベーション高く頑張っていますよ」とか「うちの会社の指導は、正直、体育会系で厳しいです。場合によっては怒鳴られたり頻繁に詰められることもあります。しかし、それは真剣さの現れであり、メンバーが成長するために必要なことと考えています。そのため、ストレス耐性が高い人が活躍できる会社だと思います」といったことを、正直に、新卒の学生や求人者に伝えている、あるいは業界情報などを見ていればすぐにわかる会社は、私はブラックではないと考えます。

 

サービス残業」や「パワハラ」を入社前に隠蔽する会社とは、具体的には、会社説明会や選考の場面でこういったマイナス面をきちんと説明しない、あるいは質問があっても煙に巻く会社です。実際に見聞きした会社の例としては、内定承諾の段階で「うちは残業代出ませんから」と言われたり、内定承諾後の研修で「土日の約半分は**という仕事をしてもらいます」ということを言われたり、あるいは、入社後にそういうことを言われたりする、ということが挙げられます。残念ながら、こういう会社は非常に多いという実感があります。

 

 

労働環境の熾烈さ、情報開示度からマトリクスを作ると、こんな感じ。右下に来る、労働環境は悪いが、情報開示度が高くフェアな会社については、私はブラックではないと考えます。

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企業の採用担当者の方へ

新卒の学生や、転職者も自分をよく見せようとしてPRする経験や実績を盛ったりするので、多少はお互い様、ということは言えるかもしれません。しかし、就職については買い手市場がずっと続いています。面接官は、遠慮せず求人者の実績や経験を突っ込んで質問することができ、そのエピソードの信頼性を確認することができます。一方で、求人者は会社の労働状況をなかなか質問できません。つまり、企業側が圧倒的に力を持っています。このことを考えると、会社が求人者に就業環境について情報をフェアに伝えていくことが求められるのではと思います。仮に中小企業であっても、求人者にPRできることは絶対にあります。就業状況について、フェアに伝えつつ、会社のPRポイント・仕事のやりがいを伝えていくことで、ミスマッチを防ぐとともに、この会社は誠実で信頼できるという他社との「差別化」すら可能かもしれません。また、中小企業は、自社のブラック度を客観的に把握できていない場合も少なくないと思います。例えば、これくらいのサービス残業は当たり前だ、あるいは、これぐらいの厳しい指導は当たり前だ、と思っていることがあります。自分たちの常識が他者や求人者にとっても当たり前とは限らないので、自社のブラック企業度の「棚卸し」が必要な場合もあるかもしれません。

 

求人者、特に新卒で就職活動を行う方へ 

会社は、就業状況や自社の問題を上手に隠す、お化粧をしている場合がほとんどです。そして、もしそういう会社に入社してしまったら、自分のキャリア(=人生)を人質に取られてしまったも同然です。きついけど、この会社なら成長できる・やりがいを持って働ける、という確信を持てているなら問題ありません。しかし、成長ややりがいについての軸が定まらず、確信がないまま、「人事や先輩社員の印象がよかった」等の理由で安易に、あるいは妥協して会社を決めてしまうと、「こんなはずじゃなかった・・・」ということが起きてしまいかねません。自分が大事にしたい「会社選びの軸」を定め、必要な情報をきちんと集めてください。例えば、キャリア・スキルアップできる会社に入りたいので、サービス残業は厭わない、という人は、どのようなキャリア・スキルアップがしたいのかを明確にして、それができる会社がどうかを見極めてください。マネージャー経験が積みたい人が、出世が遅い会社に入ってしまうと、ブラック企業でなくてもお互いが不幸です。また、情報が集まらない会社(=説明してくれない、質問しても答えてくれない、本にもWEBにも情報がない)については入社しない方が安全です。特に、中小企業は、自社の「ブラック企業度」について、客観的に把握できていない場合すらあります。

自分を安売りせず、妥協せず、就職活動をしてくださいね。

人生を無駄にしない会社の選び方

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